これまで2回にわたってテラヘルツについてお話をしてきました。
今回、テラヘルツの最終回として、テラヘルツが多くの分野で既に応用されているという事例をたくさん紹介していこうと思います。既にテラヘルツのもつ可能性や将来性は、研究所や大学などで実験や検証が続けられ、実証されています。テラヘルツによって、科学、医療、技術、そして人々の暮らしや生活、健康に関わる商品やサービスなどが生まれており、今後ますます、身近な存在になっていくことでしょう。
FAQ よくある質問
初めてのマイホームをご検討中の方には、お金、不動産、設計のことなど、分からないことがいっぱいあるはず。
そこで、当社のお客様より度々ご質問いただく疑問や不安をQ&Aでまとめました。
直接問い合わせるのは抵抗があるな・・・という方、まずはこちらをお読みください。
知りたいことや疑問が解消しない場合は、お気軽にお問合せください。
テラヘルツの多様性
はじめに
応用事例1)食品、農産物におけるテラヘルツ利用
食品や農産物が店頭や飲食店に行く前に、異物混入検査という検査を行います。そこで活用されているかのが電磁波です。X線や可視光線が異物検査で主に活用され、他にも、ガンマ波は、ジャガイモの発芽抑制、紫外光線は殺菌、近赤外光が糖度計測、マイク波が殺菌、加工、加熱、水分計測、化学分析など活用されています。つまり、この電磁波技術の活用によって、非常に食品の質が向上し、安全性が確保されています。そういえば、昔はとても酸っぱい蜜柑など食べていたように思いますが、いまでは、糖度が表示されていて、確実に好みの食品を購入することができます。このような食品、農産物の異物検査で、さらに高性能のテラヘルツ波が利用されています。今よりも生体を高分子レベルで検査できます。これまでは、検査によって検査対象の生体を破壊していた面がありましたが、非破壊検査ができ、かつ微量でも鮮明に検出することができるようになります。よって、身近な例では、スーパーの野菜や果物がより品質によって細分化されて販売されるようになり、それによって高品質もますます改善されていくのです。ハズレがないというと語弊がありますが、自然相手で中身は開けてみないとわからないというものが少なくなり、非常に細かいニーズにも対応できるようになるといえるでしょう。私たちにも恩恵があるということです。
応用事例2)テラヘルツ波で宇宙開発
2021年、日本の民間人初の宇宙旅行を実現した前澤さんのニュースがありましたが、宇宙関連のビジネスや開発は、今後も続きそうです。将来的に、宇宙旅行や宇宙ステーション滞在など非常に注目されていくことでしょう。そこでも、このテラヘルツ波が応用されようとしています。従来、宇宙探査機に搭載されていたカメラは赤外線などを使っています。観測装置では、複数の観測装置を積まざるを得ず、探査機が大型化し費用がかかるといいます。テラヘルツ波を使えば小型化した装置1台で水や酸素の探査や天気予報などに必要なほとんどの観測が可能になり、超小型衛星に搭載して低コストで宇宙での惑星調査ができるようになります。探査機の開発費用は10億~20億円と、従来の探査機の10分の1以下に抑えられます。
また、テラヘルツ帯の無線を使用することによって、衛星との通信やデータ配信がよりスムーズにいくといわれています。非常に宇宙との適用性が高く、宇宙事業の今後の発展にかかせないものとなっています。
応用事例3)安全、防犯に役立つテラヘルツ
防犯や自動ドアセンサで活用されているのは、現在、赤外線です。しかし、誤作動や不良など完全には防犯、安全が保障された機能とはなっていません。さらに、より高度な防犯、安全な機能をつくるため、テラヘルツ波の特徴を活かすことで実現できるかもしれません。
テラヘルツ波の特徴は、
1.物資を破壊せず、人体を傷つけないので安全性が高い。
2.紙、布、プラスチックは透過する
3.水に強く吸収される
4.物質ごとに固有の吸収特性をもつ
などの特徴があります。この中でも、防犯面で、物質をすり抜ける透過の力と、物質の成分や種類を見分ける透視の力を併せてもつテラヘルツ波の分光分析技術を活かして、例えば、郵便物中の麻薬などの禁止物質検査や空港やビルのゲートにおける爆発物やセラミックナイフなど危険物検査に威力を発揮することができます。直接的に、重大なテロや事故を防ぐためにつながるため、すぐにでも必要とされるものです。
応用事例4)テラヘルツ技術のバイオ関連への活用
従来、赤外線分光で検出された分子の振動エネルギーがテラヘルツ帯では低い振動エネルギーで表れるといいます。特に、DNAなどの生体高分子において、テラヘルツ分光によって、生体結合のきわめて重要な水素結合のダイナミクス観察法ができるようになります。テラヘルツ領域とちょうど水素結合のエネルギー領域に対応することから、分子識別を有する検出バイオ関連技術としてのテラヘルツ分光の利用は、大きな可能性が期待されています。それによって、生命現象をつかさどる生体分子の構造形成や機能発現のメカメカニズムを解明する新しい計測技術として期待されています。
応用事例5)テラヘルツ分光を利用した病理診断
2020年、大阪大学と仏ボルドー大学は,レーザー光を非線形光学結晶に照射した際に局所的に発生するテラヘルツ波を利用して,病理診断でも識別が難しいとされる,わずか0.5mm未満の早期乳癌を,染色を行なわずに高い精度でテラヘルツイメージングすることに初めて成功したとニュースになりました。テラヘルツ波を利用した乳癌組織のイメージングは,癌組織と正常組織を,染色を行なわずに識別できるようになります。
これまで、テラヘルツ波の波長が光に比べて数百倍長いため、比較的小さな早期の乳癌を識別することが困難でしたが、レーザーを非線形光学結晶に照射した際に局所的に発生するテラヘルツ波光源と癌組織を直接相互作用させてイメージングを行なう独自のイメージング技術を開発。それにより、これまでのテラヘルツ波を使った癌計測と比較して1,000倍近く高い精度で評価でき、乳癌のみならず様々な種類の癌の早期発見や癌のグレードの判定など機械学習と組み合わせることで、病理診断を強力にサポートできることや新しいテラヘルツ診断デバイスの開発にも期待されるといいます。
応用事例6)身近な商品 テラヘルツアクセサリー
テラヘルツはすでに健康、美容の分野で身につける商品が多数、実用化されています。ブレスレット、ペンダント、ネックレス、勾玉、枕パットなど、効果については賛否があります。ただ、すでにテラヘルツの可能性を商品という形にして、世に送り出すことも始まっています。そのうち、私たちにとっても非常に役立つ画期的な商品が生まれてくることでしょう。
第1回でも少しふれましたが、携帯による遠隔治療など、携帯が医療機器になるという、これまでの常識を超えた想像上の世界が現実になるかもしれません。かつて漫画の鉄腕アトムが時計型電話を使い、未来を想像していました。実現不可能なSFの世界と思っていましたが、今やiPhoneウォッチがあります。テラヘルツ商品がどんな未来を作っていくか今から楽しみです。
まとめ
「電磁波の最後の未開地帯」
「物質スペクタル」
これらはテラヘルツにつけられた可能性への呼称です。
私たちは、この人類の進歩ともいえること、テラヘルツについて知ることは決して無駄ではありません。いずれテラヘルツが今の5GやVRといった先端技術のワードと同じように浸透していく日が近いでしょう。そして、当たり前のように使いこなす日がくると思います。ほんの数年前まで、「携帯の電波がなかなか繋がらない」といっていたのが、いつのまにか、当たり前に繋がる環境が整っています。そこには、多くの研究や実験という試行錯誤があったことでしょう。加速的に、私たちは便利になっていく社会の中で、テラヘルツにおいて盛んに研究や実験が続けられています。今後、その性質を生かした分野で大いに活用され、さらに技術や社会などを通じて、私たちと直接関わることになるでしょう。