はじめに
家を建てることは「人生に一度の高価な買い物」といわれています。それだけ多くのお金がかかります。さらに、どのような住宅設計を選択するかによって変わってきますが、場合によっては間取り、設備、素材、色など多く事柄を決めなければなりません。それについて、家族とじっくり話し合う時間も必要となります。当然ですが、一度決めたことを完成したあとに、修正することは容易にはできせん。ほとんどの人は、この高価な買い物に対する知識や情報が足りていません。自分たちの一生を決めるといってもいい買い物を前に、もっと貪欲に知識や情報を集めましょう。そしてあなたが準備に時間をかけた分だけ、完成後、達成感と多幸感を味わうことができるでしょう。
自然素材住宅は環境にいい
自然素材住宅が良いとよく耳にするようになりました。その理由は環境と健康と良いという2つの要素があります。環境は、社会のニーズでもあります。すでに買い物にいけば、エコバック持参やレジ袋有料化。海岸に捨てられたペットボトルが海洋生物の生態系を破壊することから水筒持参や紙パック商品の導入、ガソリンの排気ガスを減らすための水素エネルギーを使ったハイブリッド車や電気自動車など、環境への取り組みが日常的なところでも意識されるようになりました。 そんな中で住宅市場においては、「自然素材」を使った自然素材住宅に注目が集まるようになりました。
まず、自然素材住宅を構成する自然素材について、その種類をご覧ください。
<自然素材の主なもの>
- 木材・・無垢材※製材されたままの単一材質でできており、文字通り混じり気のない材料のこと
- 壁・・漆喰 ※消石灰、糊、スサを混ぜてつくる左官材料
珪藻土 ※貝殻や海藻の化石に海藻糊などを加えてつくったもの
和紙、珊瑚、絹
- 新琉球漆喰※沖縄の自然素材を原料としたもの
薩摩中霧島壁※天然の火山灰・白洲の珪酸質成分を主成分とする
断熱材・・羊毛、コットン、木質繊維
- 接着剤(お米原料) ※木工用ボンドの4〜7倍もの接着力があるうえ、万が一口に入ったとしても食品が原料なので体に害をおよぼす心配なし
- ホウ酸防蟻処理剤※シロアリと腐朽菌の防腐処理に使う。農薬系の薬剤とは違い、健康、空気環境に害なし。
- 天然オイル※植物から生まれた天然成分の保護オイル
- 床・・竹、石、
- 屋根・・茅、ヒノキの皮
- 畳・・天然イグサ畳
自然素材は、古くから日本の家で使われてきた素材です。天然の丸太をそのまま切り出した無垢材、海の地積を利用する漆喰や珪藻土など、自然に由来する素材です。人体に無害は勿論のこと、有毒物質を発しないため、自然と調和し、環境を汚すこともありません。
日本の国土に占める森林面積の割合は、約70%にも達しています。日本の木といえば、スギ、ヒノキ、マツなどは思い浮かべると思います。実は、これらの森林資源は有効に使われておらず、木材の時給率は30%程度にとどまっています。森林は適切な手入れをしなければ、荒れていき、時に自然災害を引き起こす原因となります。日本の木を使って家を建てるようになれば、山にも手が入り、森はよみがえります。緑が増えれば、温暖化の進行を防ぐことも可能です。環境保全と地域の林業を活性化することにも繋がります。
健康を害する家がある
新築住宅に住み始めたら、体調がおかしくなったなど健康被害が報告されています。
以下は、実際の症例です。
以下は、実際
- 化学物質によるシックハウス症候群(めまい、吐き気、疲れやすさ、鼻、のど異常など)
- ハウスダストによるアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、
- ヒートショックによる心筋梗塞や脳梗塞
- 室温、湿度の温度差による体のだるさ、食欲不振、・肩こり、頭痛、イライラ、うつ病
- 結露により異臭
- 騒音による自律神経失調症
念願のマイホームを手に入れたのに、こんなことでは、人生が台無しです。家は、住む人を元気にするはずのものが、かえって健康を害してしまっては元も子もありません。
それではどうして、このような事が起こるのでしょうか。
健康被害の原因とは
今の建築材のほとんどが石油から作られた接着剤を使った製品です。柱、土台、梁は木片を接着剤に貼り合わせた集成材。壁には薄い板一面に接着剤を塗って何重にも張り合わせた合板。木を小さな木片にしたり、粉末状に砕いて接着剤を固めたパーティクルボードなどの造作材が使われています。石油建材から絶え間なく出るVOC(揮発性ガス)は人の健康を蝕み、約500万人といわれる人々がシックハウス症候群で苦しめられています。万一、火災が発生した場合、こういった家は全体が石油製品でできているため、多量の黒煙と猛毒ガスを発し、危険性が非常に大きいです。これらの住宅は、健康を害するおそれがあるということで、24時間換気システムを設置することが義務づけられています。
また、ずさんな施工や設計の甘さなどからも健康被害を引き起こしているケースも少なくありません。人が病気になる家は、当然、家の寿命も短いものです。日本の住宅は世界的にみても寿命が短く、日本と外国の住宅の平均寿命を比較してみると、イギリスが約77年、アメリカが約55年に対して、日本は約30年と言われています(建築白書)日本は湿気が多く、腐りやすいという風土の問題もありますが、家の腐食を引き起こす大部分は結露が原因です。結露の発生は、家の断熱性を低下させ、外気との温度差を生じさせ、カビの発生につながります。それによっても、健康へ悪影響を及ぼすのです。
自然素材は健康にいい
自然素材の最も代表的なものは無垢材です。土台や柱などの構造部分、床や壁などにも使用される材料です。天然の丸太をそのまま切り出した無添加、無機物、防腐剤不使用、もちろん接着剤を使用していませんので、体にやさしいです。
壁は、貝殻や海藻の化石に海藻糊などを加えてつくった漆喰や珪藻土が使われます。調湿効果、断熱効果、CO2吸収効果、建材に使われる塗料や接着剤に含まれるホルムアルデヒドなどの有機溶剤の吸収・分解といったはたらきがあり、消臭性や防火性に優れています。見た目にもやさしくあたたかみがあるのが特徴です。
また、塗り壁には、和紙や珊瑚を使ったものや、コットンや麻、絹などの自然素材から生まれた壁紙などがあります。断熱材は羊毛をはじめ、木質繊維やコットンなど種類もさまざまです。これまで一般的に使われることが多かったグラスウールは価格が安い反面、吸湿性が低く、結露ができやすいのが難点でした。 一方、羊毛を使った断熱材は、湿気を調整し、結露ができにくいのが最大の特徴。湿度が高いときには吸湿し、低いときには放湿して、部屋の湿度を一定に保ってくれます。
自然素材は、このように環境に影響され変化する性質を持っています。そのため、無垢の木は節がある、反りがでる、キズがつきやすかったりします。そして手入れの手間がかかることがあります。しかし、手をかけた分だけ味わいや輝きが増すのも自然素材のいいところ。特別な手入れは必要なく、愛情を持って接することが、自然素材の家を長持ちさせるコツです。無垢材は年月を重ねるほど強度が増していくという特徴もあります。これら特有の個性であり、健康や心地よい暮らしのために、自然素材が、安全で安心な素材であることになんら変わりありません。
一方、化学合成建材は、例えば、内壁材には、石油から作られる化学製品ビニールクロス、外壁材は、サイディング、床材は、薄い板を重ね張りした合板フローリングなど。接着剤を多用した新建材です。現代の家づくりには、多く使われています。その理由は、汚れにくく、腐りにくく、品質にばらつきがなく、手入れが少なくてすむからです。しかし、前述の通り、接着剤や合成材などの有害物質によって、喘息やアトピーなどの健康への影響が懸念されています。
こんな材料を使っていて、いい家といえるのでしょうか。
それでは、環境と健康にいい自然素材とそうでない建材の特徴について表で確認しましょう。
それでは、環境と健康にいい自然素材とそうでない建材の特徴について表でみてみましょう。
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ビニールクロス・合板・サイディング・樹脂塗装・鋼版
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そもそも各業者が宣伝する住宅設計にはいくつかの方法があります。その特徴について解説しましょう。
建売住宅とは
最初から間取りが決まっている規格住宅のことです。土地と建物がセットになって販売され、基本的には間取りや内装、設備の変更はできません。契約して入居までの時間が短いというメリットがあります。誰にとっても満足して暮らせるように設計されていますが、生活スタイルや家族構成は家族によって違いますので、自分たちの暮らしに合うのか十分な検討が必要です。
注文住宅とは
建築家やハウスメーカーなどに依頼してつくる家のことです。間取りや設備、内装、外観デザインなどゼロから自由に考えられます。構造、性能、素材、設備、色など決める事柄が多く、時間がかかる半面、一軒の家ができるまでの工程を踏む経験ができます。ただ、家づくりの専門的な知識が乏しいと、結果的におかしな構造になったり、健康被害を及ぼしたりするケースも報告されています。
建売住宅、注文住宅のいずれも日本の大手メーカーによるデザイン性が高く、見栄えの良さを重視した家づくりです。価格、外観、デザインなどにこだわりすぎるあまり、環境や健康に悪影響を及ぼすという残念な家が建っているのが現状です。建てるべきは「病気になりにくい」「住みやすい」「長持ちする」などという、そこに暮らす家族の健康と幸せを実現でき、かつ地域の環境にもやさしい家です。ハウスメーカーの注宅設計の方法では、もはや適していません。そこで、ここまで述べてきたような選りすぐりの自然素材を使い、心と体を癒してくれる自然素材住宅こそが、まさに、理想の家づくりなのです。
木を生かした木の家づくりの魅力とは
自然素材の中心は、木材です。その木材を生かした家とはどういうものでしょうか。イメージによっては、ログハウスのように材料のほとんど全部に木材を使った家を指すと考えている人もいます。木の家とは、木造建築の特徴である木の強さと耐久性、木目の美しさや温かさを生かした木材を使った家のことです。単にどこかに木を使うというだけではなく、骨組みに木を使い、日本の伝統的な家づくりのスタイルを取り入れた建物のことです。
木の家づくりに木材の他に欠かせないのは、職人さんたちです。例えば、大工さん、丸太や柱や板を切り出す製材業者さん、漆喰や畳などの自然素材の生産者さんなどで、ほぼ手仕事によって完成します。職人さんの技が結集することによって、多様な部材の組み合わせや仕上げ方が可能になるのです。
今の住まいは、自然を取り込みながら暮らすことが少なくなりました。近年、自然の風や温かさを使いながらの家づくり、暮らしが見直されているのには、やっぱり、木をはじめとした自然素材が、日本の気候風土に適し、快適に暮らせることに気づいてきたからです。
木の種類にはどんなものがあるのか
木といっても、いろいろな種類があります。木の種類について、木をどう選んで、どう使うかは、木の家を建てるためにとても大切なことです。それでは日本の主な木材をあげてみましょう。
ヒノキ・・日本を代表する高級木材。寺社建築、ヒノキ風呂になど代表されます。強度が高く、耐水性、耐久性、耐朽性も高い。狂いも少ないため構造材に適している。深い香りにも癒されます。バランスの取れた良材です。
スギ・・・まっすぐ伸びる「直ぐ」から名付けられた木材。価格も手ごろでどんな場所にも使いやすい。見た目が美しく、肌触りも柔らかいので、赤ちゃんがハイハイしても大丈夫。
ケヤキ・・昔から柱、梁として家の大黒柱としてきた木。強度、耐朽性とも高く、寿命が長い。
パイン(マツ)・・世界中に多くの種類があり、日本だけでもアカマツ、クロマツ、カラマツ、エゾマツなど。北欧テイストの家で好まれる。程よい軟らかさが心地よい。
クリ・・はっきりとした木目が特徴。堅く、キズが目立ちにくい。水回りに最適。
ヒバ・・精油成分で防虫、抗菌効果がある。
モミ・・クリスマスツリーの木として知られている。強度が高く、摩耗やキズにも強い。黄色の上品な木目。
サワラ・・すっきりとした木目と適度の軟らかさが特徴。湿気に強く、耐朽性に優れている。
オーク(ナラ)・・ウィスキーの樽に使われてきたもので、高い耐久性と耐水性があります。
ウォールナット・・マホガニー、チークに並ぶ世界3大銘木のひとつ。濃い色合いでシックな雰囲気を演出する。高級感があり、堅くて耐水性にも優れている。
木は育った場所の近くで使うのが、木にとってよい環境だといわれます。木が長持ちするといいます。ただ木はとても多くの種類があり、選択肢は数限りなくあります。どこにどんな木材を選ぶかは、やはり特性を知り、適材適所で選ぶことになります。
例えば、床に使われる木は大きく2種類に分けられます。ひとつは温かさを得られる材。空気を多く含む針葉樹。とくにスギやサワラ。これらの材は、軟らかく肌触りがよくうえ、空気を多く含むので温かいのが特徴です。反面、軟らかいのでキズがつきやすい材でもあります。もう1種類はキズがつきにくい硬い材。クリやナラ、カエデは空気が少ないため、温かさはありませんが、キズにはつよい。椅子で過ごすリビングに向いている木です。その性質をいかして考えると、廊下やリビングは、スギやサワラ、キッチンや子供部屋はケヤキ、ナラ、カエデが向いているということになります。
また、同じ木でも、製材の方法や、木のどの部分を使うかによってずいぶんと雰囲気が変わります。たとえば、木目が平行に並ぶ柾目と、木目が渦を巻いたように見える板目。木の中心部を使った心、赤身と、皮に近い部分を製材した辺材、白太などがあります。また、斑点のように見える「節」の数によっても、値段や仕上がりに違いが生まれます。さらに、天然オイルや蜜蝋ワックスなどを塗ることによっても印象はガラリと変わります。
無垢材でいい家を建てよう
無垢材とは、製材されたままの単一材質でできており、文字通り混じり気のない材料のことです。
例えば、天然の丸太をそのまま切り出して、床材の形に加工したものを無垢の床材といいます。肌触りがよく、部屋の湿度によって水分を吸収、放出し、室内の湿度を一定に保ってくれます。つまり天然の木を使った木材は、木が持つ調湿性や脱臭性、遠赤外線効果によって、夏涼しく冬暖かい、一年を通して快適な住まいが実現します。住む人にやさしく、家も長持ちする材料です。
体にも心にも心地よさをもたらしてくれる無垢材ですが、自然素材ならではの特徴を生かし、長く付き合って暮らしていくためには、無垢材が持つクセや性質を知っておく必要があります。
そもそも木は、人間と同じで一本一本に個性があり、色や形、硬さや節の数だけでなく、製材したあとも、反ったり、曲がったり、ねじれたりと、「狂い」が出てくることがよくあります。無垢材は、接着剤で固められた集成材と違い、呼吸をしています。このため、温度や湿度などによって伸縮を繰り返します。夏の湿気を吸って膨張したり、冬の乾燥によって収縮もします。空気の乾燥によって縮んだり、反ったり、冬になるとフローリングに隙間ができたりするときがあります。ただ無垢材に多少の狂いが出るのは、木が生きている証拠。それは無垢材の個性であって、生きた木と一緒に暮らすという意識と余裕を持って、自然素材の家を楽しむことが必要になります。
おわりに
昨年の政府が発表した住宅着工統計調査によると、新築住宅着工戸数は全国288738(前年比1.9%増)新潟県は6840(前年比6.6%)。毎年、実に多くの方々が、マイホームの購入を決断されていることになります。また、持ち家率の県別ランキングをみると、上位は富山、福井など北陸の近県で占められています。新潟県は全国第6位。この上位に占める2県、富山、福井県は全国幸福度ランキングでも上位になっています。つまり、持ち家率の高さが幸福度の高さに比例しているといえるでしょうか。これらの統計的なデータから、ライフスタイルや働き方、生き方が多様化している時代の中でも、住まいに関しては、自分のマイホームを持ちたい、作りたいという願望は、昔と変わらず根強い人気があることをわかります。どんなに時代が経っても人の営みの基盤である家は、私たちの暮らしや人生を支える幸せな場所であることに変わることはありません。
家を建てることは、人生においてとても素晴らしい経験となります。最初は、わかないことが多くて、とても不安になると思います。どうぞ、勉強会や見学会に足を運んでみてください。完成見学会で仕上がりを確認したりすることは、自然素材を使った家での暮らしを具体的にイメージできる絶好の機会となります。そこで浮かんだ疑問や質問があったら遠慮なくお声かけください。私共が懇切、丁寧にお手伝い致します。
30年後、50年後に、年齢とともに重ねた自然素材の経年美を見ながら、「この家を作って本当によかった」と家族と笑顔で語り合う、そんな日がくることを願っています。
<参考文献>
・「失敗しない家づくりの法則 3000棟取材した住宅ライターが明かすホントのこと」(シャスタインターナショナル)2020年5月刊 木村大作著
・「いい家は無垢の木と漆喰で建てる」(ダイヤモンド社)2009年4月刊 神崎隆洋著
・「マンガでわかる!ハウスメーカー選びのツボ」(廣済堂出版)2019年10月刊 市村崇著 市村博著
・「感動と癒しの「木の家」に住みたい」(日本実業出版)2005年6月刊 中野博著
・「新「いい家」が欲しい。」(創英社)2015年12月刊 松井修著