わいけい住宅 第4回住宅とアレルギー
はじめに
私たちは、人生のさまざまな場面で、大小にかかわらずいろいろな問題と直面しています。日常生活の衣食住において、アレルギーの問題が避けては通れない厄介事となっています。たとえ、本人が健康でも、家族や周囲になにかしらのアレルギー性疾患を持った人を容易に思い浮べることができるほど身近な存在です。食品にはアレルギー表示を気にしながら買い物をする人、花粉症で苦しむ人、アトピーで痒みに耐える人、喘息で吸引を余儀なくされている人など、アレルギーを発症した場合には、体の一部として、一生付き合っていかなくてはならないものもあります。今回、住まいにおけるアレルギーについて考えていきます。私自身、年少期にアレルギー性鼻炎になり、それ以来ずっとアレルギーと付き合う生活を余儀なくされています。ですので、アレルギーについては並々ならぬ思いと、少しでも共存できる手立てはないかと試行錯誤しています。
アレルギーとは
私たちの体には、細菌やウィルス、寄生虫などの感染性微生物や異物を攻撃し、排除する「免疫」という防御システムが備わっています。この免疫の働きが、危険でないものにまで反応し、攻撃してしまうことで起こるのが、アレルギーです。環境やライフサイクルの変化によって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態です。
アレルギー疾患には、主に食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息(ぜんそく)、薬剤アレルギーなどがあります。
例えば、特定の食べ物を危険な異物とみなされると食物アレルギー。卵、小麦、蕎麦など種類は様々で、口にする食べ物に対する免疫の過剰反応です。また、スギ花粉やダニの糞、皮膚の汚れなどが異物として認識されるとアレルギー性鼻炎(花粉症)、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などの病気になります。これらのアレルギーにかかり、鼻水、くしゃみ、咳、痰、かゆみ、下痢、嘔吐などに悩まされている人は多いでしょう。慢性化することが多く、食物アレルギーには、血圧の低下や意識障害など生命が脅かされるケースもあります。
アレルギーのしくみ
アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」といい、私たちの身のまわりには、食物、花粉、ダニなど多くのアレルゲンが存在します。このアレルゲンが体の中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらき、「IgE抗体」という物質が作られ、この状態を「感作」といいます。いったん感作が成立した後に、再度アレルゲンが体内に入ると、IgE抗体がくっつき、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー症状を引き起こします。
アレルギー・マーチとは
幼児期には、アレルギーの疾患が特に顕著に現れます。乳幼児期のアトピー性皮膚炎を始まりとし、続いて食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と次々と異なる時期に出現してくることが多く、これを「アレルギー・マーチ」と呼びます。近年、幼児のアレルギー疾患が増加する中で、この「アレルギー・マーチ」の発症、進展を予防することが重要な課題であり、そのための早期診断、早期介入の研究が進められています。
アレルギーの増加
実に「日本人の3人に1人」4200万人以上がアレルギーに悩んでいます。(厚生省「アレルギー疾患の疫学に関する研究」1992~1996年。)全体でみると、何らかのアレルギー疾患を持っている人は乳幼児 28.3%、小中学生32.6%、成人 30.6%にのぼります。東京都衛生局によると「3歳までに何らかのアレルギーの症状が有り、かつ診断されている児は約4割」(平成26年のアレルギーに関する3歳児全都実態調査)。文部科学省調査では、アトピー性皮膚炎の児童生徒約70万人。ぜんそくは約73万人。アレルギー性鼻炎は約118万人(全体の約10%) です。特に乳幼児から児童のアレルギー疾患が増加しています。 これは異常が日常化した姿と言っても過言ではありません。
症状別にみると
【喘息】過去30年間で、小児の喘息は1%から5%に、成人の喘息は1%から3%に増加し、約400万人が罹患していると考えられます。平成20年の有症率は、幼稚園児で19.9%、6~7歳13.8%、13~14歳で8.3%だった。国民全体で約800万人が罹患していると考えられます。
【花粉によるアレルギー性鼻炎】平成13年に実施された財団法人日本アレルギー協会の全国調査によると、スギ花粉症の有病率は、全国平均約12%であった。平成18年における全国11か所における有病率調査では、鼻アレルギー症状を有する頻度は、47.2%であった。
【アトピー性皮膚炎】平成12年度から14年度にかけて厚生労働科学研究で実施された全国調査によると、
4か月児;12.8%、1歳半児;9.8%、3歳児;13.2%、小学1年生;11.8%、小学6年生;10.6%、大学生;8.2%だった。4か月から6歳では12%前後、20~30歳代で9%前後の頻度で認めることが明らかとなりました(アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008)
【食物アレルギー】平成15年度から17年度の調査によると、乳児が10%、3歳児が4~5%、学童期が2~3%、成人が1~2%。我が国の大規模有病率調査から、乳児有病率は5~10%、学童期は1~2%と考えられる。成人は不明(アレルギー疾患診断治療ガイドライン2010)。我が国全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患していることを示しており、急速に増加しています。出典:リウマチ・アレルギー対策委員会報告書(平成23年)
アレルギー増加の原因
年代別に有病率を調べると、50代の人が陽性になった割合を調べると約40%でした。つまり、若い世代の人が陽性率が圧倒的に高いです。こうして結果は海外で行われた調査でもよく似た結果が得られました。世代のなかで変化は、経済の発展で生活の質が変化したことと、幼児期に農家で育ち、家畜に囲まれ過ごした人よりも都会育ちの人のほうがアレルギー疾患にかかる割合が高いといわれます。それらの事実を増えると、都市生活が広がり、衛生環境が改善されていったことがアレルギー増加の原因と考えられます。清潔な暮らしをすることで平均寿命は伸び、感染症などは減りましたが、その分、アレルギーが増えていったといえます。
住まいのアレルギー
1、シックハウス症候群
アレルギーは過敏症の一種であり、世界アレルギー機構(WAO)の分類では、住宅におけるシックハウス症候群は非アレルギー性過敏症と位置づけられています。過敏症とは「健常者が耐えられる程度の弱い刺激に鋭敏に反応し、体に一定の症状が現れる疾患」といいアレルギー反応を介するものと介さないものに大きく分けられます。シックハウス症候群は、住宅に由来する様々な体調不良を総称したもので、特定の疾患ではありませんが、化学物質であるホルムアルデヒドなどによる「化学物質過敏症」なども同様に、免疫との関わりが証明できない過敏症としてアレルギーのカテゴリーには含まれないことになります。あくまで学術的な定義の問題であり、最近の研究では、過敏症の定義から外れるような研究結果がでています。いずれにせよ、うるしや化粧品などによる肌のかぶれが過敏症で、花粉症がアレルギーなど区別することはあくまで、言葉の違いであり、疾患者にとっては、それがどちらでも人を長く苦しめる病であることにはかわりません。
2、化学物質過敏症
化学物質過敏症は、 ほんのわずかの化学物質で、めまいや頭痛、呼吸困難等になるという病気。煙、洗濯物、排気ガス、蛍光灯など、日常のありふれたものに反応してしまうので、特に都会では外出はまずできませんし、発症すると以前と同じような生活ができなくなってしまいます。2008年現在、日本中に一万人以上と言われています。
住まいのアレルギーの事例
1.化学物質ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどを含んだTVOC(総揮発性有機化合物)が木材から揮発されており、木の良い香りが度を越すと、ニオイに弱い人、敏感な人がアレルギー症状を起こします。
2. ヒバ油は抗菌作用があるという話から、ヒバがアトピー性皮膚炎に良いということが言われたことがありました。全くの思い込みで、ヒバ材を使うことでアトピー性皮膚炎の改善することは、まったく別の話で、かえって症状を悪化させてしまう事例が報告されています。
3.節だらけの太い丸太を大量に使ったログハウスは、何年経っても室内に化学物質にあふれていて、アレルギーや過敏症の人は住めない。
花粉症
花粉症のアレルゲンとして最もポピュラーなスギとヒノキは、建築材や家具材としても非常によく使われています。花粉症は、スギやヒノキの花粉症に対する即時型のアレルギー反応を指し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目や鼻、喉のかゆみなどの症状が現れます。地域差はありますが、日本人の25%、4人の1人が花粉症にかかっていると言われています。
日本は世界有数の花粉症大国といわれています。最も大気中に多いといわれているスギ花粉も過去30年間で、最初の10年間の平均花粉数は、最近の10年間と比較すると約2.8倍にも増えています。それと同時に花粉症の種類も50種類を超えて、有病率も格段に増えています。その理由は、花粉症の発症は、アレルゲンとなる花粉の飛散量に比例しますが、そのうちの約70%がスギ花粉によるものです。日本の国土の12%、森林面積の18%がスギにあたり、しかも戦後にスギが大量に植林されています。花粉症が最初に確認されたのは1963年で、70年代以降に急増していますが、この頃から植林されたまま、伐採されずに放置されたスギが開花の適齢期を迎え、相対的に花粉の飛散量が増えたことが予想されます。
杉(スギ)
スギ科は東北や北陸などにわずかに残っていますが、戦後に焦土と化した山々に造林され、現在約450万ヘクタールも植林されています。スギ花粉が発見されてから既に半世紀が過ぎたにもかかわらず、依然として空中花粉飛散量はいまだに増加中です。
檜(ヒノキ)
わが国固有種の重要な建築材、家具材であり、造林面積もスギについで多く、約240万ヘクタールが主に関東以西の太平洋側に植林されており、西日本の一部でスギより植林面積も多く、飛散花粉数も福岡市などではスギよりも多くなっています。
スギアレルギーとヒノキアレルギー
建築材に主に使用されるスギとヒノキですが、檜の家に住むことでヒノキアレルギーが発症することや、スギの建築材が原因で発症することについて、もちらん絶対にないとはいえません。触れるだけでアレルギーの症状が起こる方は、スギや檜の家に住んだ際にも同様の症状が起こる可能性があります。また、一般的に花粉症を持っている方は、アレルギーの症状が発生しやすいことも覚えておきましょう。しかし、木の家はアレルギーが起こりにくいことが証明されています。そのため、花粉症を理由に木の家を特別に嫌う必要はありません。
檜の家は安全
檜はどちらかといえば、「檜の家」としていわれるように、家の設計上、非常に多く使用されます。檜の香りには、カビや細菌が発生するのを抑える効果があります。そのため、寿司屋のネタ箱やカウンターなど、安全性が求められる部分の材料として使われています。また、ご家庭で使用しているまな板が、檜から作られていることや檜風呂が有名なように、浴槽など、水回り用品の材料として使われています。そして、ヒノキアレルギーの原因は主に檜の花粉です。まな板やネタ箱はもちろん、家の材料となる加工が施された檜に花粉は付着していません。そのため、檜の家に住むことが直接的な原因となり、花粉症が発生する可能性は限りなく低いでしょう。
日本の夏は湿度が高く、反対に冬は湿度が低く乾燥する気候が特徴です。檜の家に限らず、木の家は周りの湿気を吸収したり放出したりする効果があり、蒸し暑い夏は湿気を吸収し、乾燥した冬は水分を放出します。そのため、木の家は加湿器や除湿器に頼らずとも快適な空間を作り出せます。前述のとおり、檜は、身近なところで使われ、湿気に強い材料です。湿気により土台となる部分や柱が腐る可能性も少なく、細菌の発生も抑えられるのが檜の家の特徴です。
カーペットと住まい
絨毯=カーペットとアレルギーの関係は、家の畳やじゅうたんがダニの温床になっているということがあるといわれています。カーペットは、ダニの温床になりやすいので、最近では敷き込みカーペットが減り、フローリング床が増えています。ただ、フローリングだから安心とはいきません。フローリングやビニールクロスなど硬質の床材の場合、少しの空気の流れで細かく小さな物質は舞い上がってしまうために、掃除や歩くたびに細かいチリ、ハウスダスト、ダニなどが部屋中に舞い上がってしまいます。いったん舞い上がったチリや誇りは時間をかけて下に落ちてくるため、硬質床材の表面には常に目に見えないハウスダストが落ちている事に
なります。
逆にカーペットでも織物であるキリムやラグなどはホコリやダニの死骸を吸着し、空気中に舞い上がるのを押さえる働きがあるものもあります。特に羊毛製のラグは表面が鱗状になっているため、微小なチリやホコリが絡み合って定着します。カーペットには、もともとアレルギーの原因となるカビやダニは生息していません。有害物資は外からは入ってくるものです。カーペットが必ずしもダニの温床と決めつけることはできませんが、かつての絨毯は、敷いた部屋が畳敷きの和室で、6畳敷きや8畳敷きなど、部屋の端から端まで目一杯に敷かれ、
重いため、一度敷かれてしまうと中々動かすことが難しく、何年も敷きっぱなしにされていました。畳は本来呼吸するもので、湿気調整が可能なものです。ただその上に分厚い羊毛の絨毯が敷かれると呼吸困難になってしまい、ダニやカビが繁殖していくのです。そういった事情から、カーペット=ダニの温床としてアレルギーを引き起こす原因のひとつとなったのです。カーペット自体にカビやダニなどが付いているわけではありません。使い方によって問題が発生してしまうのです。
ダニについて
一般的に「ダニ」という言葉には悪い印象がありますが、人間の生活環境には多くのダニ類が共存しており、決して悪者ばりではありません。しかし、人間の健康に病害を及ぼすダニ類は医ダニ類と呼ばれています。
ダニ類は分類学的には節足動物クモ網の中のダニ目に属します。つまり、クモの仲間であることがイメージできます。その種類はたいへんに多く、地球上で2万種類以上が知られています。ダニの中には動物や植物に寄生するもの以外に、地面や土の中、住宅の内外など、さまざまな環境に生息します。また落ち葉や動物の死骸などを分解することで自然環境に重要な役割を果たすダニがある一方で、ヒトに病害を引き起こす医ダニ類がおり、刺すダニと刺さないダニとも区別できます。
アレルギーとなるダニ類
チリダニ類アレルギー
チリダニ類はハウスダウトの中の有機物などを食べており、主に室内のカーペットや畳、寝具類、布製ソファー、ぬいぐるみなどに生息しています。
このダニ類は、喘息やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などの原因として知られています。生きたダニだけではなく、その死骸や排泄物もアレルギーとなります。とくに乾燥する秋に室内にダニアレルゲンの量が増えるとされています。また、貯蔵食品中で繁殖もしますので、室内環境でも検出されます。食品への混入による劣化の原因になることがあります。
住まいのおけるアレルギー対策
対策1、ダニは室内の温度管理と掃除で撃退
チリダニ類を居住環境から減らすためには、餌となるアカ、フケや食物などの居住環境内に溜めないこと、カーペットやぬいぐるみなど、チリダニ類が好んで生息・繁殖する場所を極力減らすこと、そして繁殖に好条件である高温、多湿環境を作らないことが大切です。そのためには掃除機でこまめに部屋の掃除をし、できる限りカーペットはフローリングにして室内の調製品も必要最小限にすること、部屋の風通しをよくして乾燥させること、布団や毛布などの寝具類は丸洗い可能なものは丸洗いをして、高熱を乾燥させることなどが理想です。いまはダニとり掃除機などがありますので、利用することをおすすめします。また、大掃除や衣類の入れ替えなどの際には、マスクやゴーグルなどを着用してダニアレルゲンの体内への侵入を防ぐことも重要です。
対策2、皮膚バリアを作る
免疫の過剰反応によってアレルギーが起こりますが、最近の研究では、発症のきっかけは皮膚バリアの機能のトラブルが原因とされています。皮膚だからアトピーだけの話と思ってしまいますが、皮膚とは関わりのなさそうなアレルギーも、気管支ぜんそくや花粉症も発症のきっかけが皮膚であることが明らかになってきています。
皮膚の機能の低下を防ぐ保湿することが以前にも増して重要になっており、すでに幼児期のアレルギーの対策としてよい効果があるとされています。
対策3、アレルゲン検査
アレルギー性疾患は、成人になっても油断できず、ある日突然、発症することがあります。成人になって花
粉症になったひとを何人も知っています。そうなった場合は、医療機関でアレルゲン検査を受けることをおすすめします。症状によって、血液検査や皮膚反応検査が行われます。自分自身のアレルギーの原因物質はなにかを知っているだけでも対策が違ってきます。同じ花粉症でも、スギアレルギーなのかブナクサアレルギーなのかで、季節によって症状が異なりますし、それらの草木が多く茂っているところは避けることもできます。急な発作が起こる喘息であるならば、空気清浄など気にすべきところも変わってきます。アレルギー疾患と診断されたならば、治療や病気と長くつきあっていく場合もあります。生活そのものが、それまでとは大きく変わることもでてきます。それがどうも住環境が原因であると思われる場合、治療は医療機関になりますが、使用している木材や塗料など様々原因の可能性を考えられます。建築のプロの観点から、お役に立つ情報やアドバイスができるかもしれません。お気軽にご相談ください。
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